2020/09/07 02:01
体に馴染む健やかなコーヒーの秘密は、真面目で誠実な富山のものづくりにあり
「くらうんさんのコーヒー豆をうちで取り扱いさせていただけないでしょうか?」
コーヒーを飲み終えお会計を済ませた際、わたし的にはかなりの勇気を振り絞りまして、マスターの小島治さんにこう切り出し、水と匠のオンラインストアのページを見せながら必死で説明をしました。
「いいですよ」、思いのほかあっさりとお返事をいただき、ちょっと拍子抜けしたような、信じられないような、なんだか不思議な気持ちになりました。。
何を大げさな、とお思いかもしれませんが、私にとってくらうんさんのコーヒーは「世界一」美味しいと思えるような特別な存在だからです。
私は珈琲についてすごく詳しいわけではないのですが、ケメックス・コーヒーメーカーを使うくらいにはコーヒー好きです。でも世界中にあるチェーン店のコーヒーはどれもあまり好みではなく、昔地元の喫茶店で飲んでいたコーヒーの方が美味しかったなと思っていました。今では懐かしいタイプの喫茶店が、かつてここ高岡市にもたくさんありました。
「くらうん」さんもその一つ。創業1958年の高岡の中では老舗の喫茶店。私が地元にいたのは高校までだったので、その頃は「大人がいく喫茶店」というイメージで敷居が高く、実際にくらうんさんのコーヒーを飲むようになったのは、地元に戻った7年ほど前から。当時の事務所がくらうんさんの近くにあり、ランチに行ったのがきっかけでした。
当時のくらうんさんは創業当時からの建物と内装で、それはそれは味わいある雰囲気と洋食も美味しいお店でした(現在は移転されています)。何よりお店で自家焙煎されているコーヒーのいい香りが常に店内に漂い、種類も豊富にありました。いつもブレンドを頼んでいたのですが、ある日思い切って自分の好みを小島さんにお伝えしたところ、「では、グァテマラ・コンポステラはいかがですか?」と薦めていただき飲んだところ、「これだ!」とあまりに好みドンピシャに、心の中で叫んだのを覚えています。。
私は深煎り豆の苦味が苦手で、酸味のあるコーヒーが好きなのですが、このコーヒーはそのバランスが良く、香ばし過ぎないフルーティな香りも気に入りました。これはくらうんさんのコーヒー全てに言えることですが、「雑味」がなくて体にすっと入ってくることにも、とても驚きました。
それ以来、他の種類も試しつつも、やっぱりグァテマラ・コンポステラに戻ってきて、愛飲しております。当時、「宮田のたい焼きとくらうんのコーヒー」は、私にとって休憩のお供として最強の組み合わせでした。
今回、ページでのご紹介のために焙煎の様子を撮影させていただき、詳しくお話をうかがったことで、その体に馴染む健やかな美味しさの秘密がわかりました。
小島さんは、日本のコーヒー界のレジェンド、バッハの田口護さんに師事し、今も年2回は田口さんの元に通われていらっしゃるのだとか。田口さんの弟子になる条件は、「真面目な珈琲屋であること」。それには3つ条件があって、①ハンドピックで良質な豆を選ぶ、②芯まで火を通すきちんとした焙煎、③豆が新鮮であること。
これらを守ることは簡単なようでいて、実はとても大変ですが、小島さんは実に50年以上これを守り続けておられます。ハンドピック一つ取っても、焙煎の前と後の2回行う、手間のかけよう。焙煎してみると、傷んでいた豆が小さく潰れるので、焙煎した後の選り分けも大事なのだそうです。
焙煎は、だいたい10日に1回のペースだそうですが、毎回の条件(気温、湿度、焙煎時間や温度)をずっとノートに付けておられて、そうした長年の経験の積み重ねを元に焙煎機をコントロールされています。現在の機械はセミオートで随分と簡単になった、と小島さんはおっしゃいますが、毎回の微妙な加減はやはり他の人には任せられないのだとか。
失礼ながら、かたくなで頑固なイメージが小島さんに対してあったのですが、それは正しくもありながら、実は真逆で、師匠に教わった「良いコーヒー」を提供するために、むしろ素直に無邪気にコーヒー豆に向き合っておられるのだということが分かりました。
素直に誠実に豆に向き合うからこその雑味のない、健全なコーヒーになるのですね。「良いコーヒーは美味しく、心にも体にもよい」と考えておられる小島さんは、だからうちの申し出も快諾して下さったのでした。その良いコーヒーを一人でも多くの方に届けたいという思いからです。富山の匠は、コーヒー豆焙煎に至っても真面目でした。。
コーヒーはもちろん好みがあるので、どなたにとっても世界一かはわかりませんが、水と匠では中煎り・中深煎り・深煎りのくらうんさんの代表的な3種類のコーヒーをご用意しましたので、ぜひ一度お試し下さい。
小島さんから教えていただいた「美味しいコーヒーの淹れ方(ホット編・アイス編)」も動画でご紹介しています。また、コーヒーに合う富山の和菓子や作家さんたちのコーヒーカップも集めましたので、皆さまのブレイクタイムを彩るお供にお選びいただけたら幸いです。
なお、「宮田のたい焼き」は今ではもう食べることができません。数年前に店を閉めてしまわれたからです。富山のソウルフードがまた一つなくなってしまいました。こうした手間ひまをかけて誠実にものづくりをされているお店やものをこれ以上失いたくない、というのが私たちがこのオンラインストアをやっている理由の一つでもあるのです。