富山の自然と作り手

2020/11/16 10:36

五感で体感。富山の大地の恵みがもたらす癒しの時間。


富山は県庁所在地が概ね県の中央部にあり、そこから東西南北どの市町村へ向かっても、だいたい車で1時間ほど。コンパクトな県土の中に、立山連峰から富山湾までがギュッと詰まっているという特異な地形をしているので、動植物の生態が多様。ゆえに、ものづくりのバリエーションも豊かです。

 

今回ご紹介する「精油」と「絹織物のマスク」を製造する2社は、まさに、東から西へ車を走らせること1時間の距離。県内を横断しての取材は、改めて富山の自然の恵みの豊かさを実感する機会となったのでした。 



秋晴れの日の朝、まず向かったのは北アルプス立山連峰の剱岳のふもとにある上市町(かみいちまち)です。ここは、映画監督の細田守さんの出身地で、「おおかみこどもの雨と雪」の舞台になるなど、大自然が身近なところにある地域です。劇中に、山がドンと見えるシーンがあるのですが、まさにあの感じで、険しく厳しい剱岳が町を見下ろしています。


 そんな緑に囲まれた山の裾にある「立山山麓森林組合上市支所」の敷地内に、1組目の取材先「アロマセレクト」さんの精油蒸留工場があります。敷地に車を停めて、降り立った途端、樹木のスッキリとした香りが漂って気持ちが良いのです。

 

「良い香りに包まれているからか、私たちもここで作業するときはより気分がリラックスします」とスタッフの皆さん。香りが心に与える影響って思っている以上に大きいのかもしれませんね。撮影に入っても、スタッフの皆さんは和気あいあいと笑顔。



精油づくりは、この4人のチームワークによって行われています。その大きな特徴は、地元にある資源を無駄なく生かしていること。クロモジやタテヤマスギの枝葉は、森林組合から仕入れているのです。使うのは、健全な森林を保つために伐採された間伐材や、下草刈りのために切られた枝葉。自然の恵みを適度に活用し、私たちの暮らしに循環させる持続的なものづくりを目指しています。「クロモジならばあの辺に・・・」「カモシカさんはこのエリアに・・・」なんていう会話からも、皆さんの日常が自然とともにあることが伝わってきます。


ご紹介しているアロマセレクト さんの精油(クロモジ、タテヤマスギ、ユズ)の原料は全て富山県産。ただ香りが良いというだけでなく、過去には富山大学、現在は富山県産業技術センターと共同で商品ごとに成分分析もしっかり行われています。

 

そうした科学的根拠に基づく情報も参考になるのですが、不思議なことに人間の感覚は日々異なります。同じ香りでも、温度や湿度、その日の体調によって感じ方が変わるのだそうです。奇しくも、流行りの感染症によって「嗅覚」が健康のバロメーターであることも明らかになりましたよね。「たかが」しかし「されど」。香りによる“ゆとりの時間”を意識的に作ることで、心と体の状態に目を向けるのも良いかもしれません。

 


さて、“香り”からバトンタッチ。2組目の取材先は、南砺市城端(じょうはな)の「松井機業」さんです。富山の西、岐阜県との県境に近い城端地区には、「絹織物」の歴史があります。

 


絹織物の起源は440年前、戦国時代末期まで遡ります。その後、お隣石川県の加賀藩前田氏の庇護を受けて発展してきました。城端は、真宗大谷派の善徳寺の門前町として栄え、近隣の産物などが集まる市も盛んに行われたといわれます。史書によれば、現在の五箇山や福光町でも養蚕が行われ、繭や生糸が城端に集められたそうです。

観光スポットで知られる世界遺産五箇山の合掌造り集落でも、建物の2階で養蚕が行われ、昔は蚕が桑の葉を食べる音がよく聞こえた(それほどたくさん飼育していたということですね)という昔話を聞くとこがあるんですよ。

 

そうした歴史的背景のもと、松井機業さんは、明治10年の創業以来140年間、一貫して絹織物の製造と販売を手がけてきました。中でも代名詞といえるのが「玉糸」と呼ばれる、貴重な糸を使った「しけ絹」の生産です。

 

一般的に、蚕は1頭で1つの繭を作りますが、ごく稀に2頭の蚕がひとつの繭玉を作ることがあるのです。その確率はわずか2〜3%といわれるほど。その稀少な繭(玉繭)から生まれた糸によって織られるのが「城端しけ絹」です。2頭の眉が吐き出す糸には独特の節があり、切れやすいなど、扱いが難しいのだそうですが、それだけに人工的には作ることができない風合いがあります。

 


ご紹介している「美顔マスク」は「しけ絹」ではないのですが、長年の「しけ絹」づくりに基づいた確かな技術によって織られています。絹織物の肌心地の快適さは、各種試験結果のデータでも証明されている通り。人の暮らしに何千年と使われてきた素材だというのも頷けます。

 

「生糸の光沢は“命の輝き”」と話す、松井さん。

なるほど、改めて考えてみると、命とひきかえに生まれる糸は、絹の他にはありません。生糸を製糸するには、中に蚕がいる繭を熱湯にさらさなくてはなりませんが、羊毛や綿はさにあらず。

 


蚕のことを「お蚕さん」と丁寧に呼ぶのは、その尊い命に対する感謝からでしょうか。松井さんの工場で目にする、とても古いのだけれど手入れの行き届いた織機や道具、何人もの職人さんが往来した気配の残る作業場に、誠実なものづくりの精神を肌で感じることができました。

 

城端の絹織物と上市町の精油。それぞれが、健やかであることを目指して丁寧に作られた商品です。

 

環境の良さ、香りや使い心地の良さ、おいしいご飯を食べる時と同様に体が喜ぶ感覚。

富山の大地の恵みがもたらす“癒しの時間”が、皆さまの明日の活力に繋がりますように。

 

「水と匠オンラインストア」

金岡紀子




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